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2018年5月19日開催 第19回 がん診療アップデート 開催レポート 緩和医療について

小山教授の講演

「患者と家族の「こころ」のケア」 近幾大学医学部附属病院 心療内科教授 小山 敦子
普段は近幾大学の中で心療内科医をしてますが、大阪南医療センターの中でも週1回緩和ケアチームに参加させて頂いて活動をしています。
また近幾大学のもう1人の心療内科医ももう1日参加させて頂いていますので、週2回大阪南医療センターの中の緩和ケアチームに参加させて頂いて活動をしていますので、何かありましたらお気軽に声をかけてください。

昔「男はつらいよ」という映画があったと思いますが、がん患者さんは様々な辛いことがあると思うのです。
近幾大学医学部附属病院 心療内科教授 小山 敦子
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まず最初にがんと診断されたら、今の時代でも真っ先に「私ってもしかして死んじゃうの...」って思います。それ以外にも「もう友人にも会いたくない...」というふうな形で人間関係を拒絶してしまう方もいるかも知れません。
「定年になったら海外旅行に行こうと思ってたのに...」といった色々な人生の目標を途中で断念せざるを得ないこともあるかも知れません。先程から話題になっていましたが、身体的にも痛いしだるいし、乳がんなどでは外形変化が起こると見せたくないと思うかも知れません。また家族や周りに迷惑かけてるしといった遠慮があるかも知れません。
こういった様々な辛さががん患者さんを襲ってるかと思います。

がんに限りませんが、病気になりますとこういった痛いといった身体的な痛みはもちろんのこと、この先どうなるんだろうといった不安や気持ちが落ち込んだりという精神的な苦痛もあるかと思います。また仕事どうしよう、医療費どうしようといったような社会的な苦痛もあるでしょう。
さらには、自分の生きてきた人生は何だったろうというスピリチュアルな苦痛。こういったものが相まって全人的苦痛となって患者さんを苦しめているわけです。

ですので、医療者の方も、体が痛かったら痛み止め、不安なんだったら抗不安薬という一対一対応では決して患者さんの苦しみを和らげることはできないというふうに考えております。
この全人的苦痛を和らげるためには私達も一丸となって全人的医療を実践していく必要があると考えています。
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がんの治療の中で様々な時期があると思いますが、患者さんにとって非常にショックを受けるような悪い知らせを受ける時というのがあるかと思います。まず最初は「もしかしてがんかも知れない」と心配になりながら病院に訪れる時、そしてその結果治療が難しいと言われるようながんであると診断を受ける告知をされた時、治療が進んでいって再発したと告知される時、また積極的な抗がん剤治療を中止せざるを得ないと聞く時、こういった様々な時期がありそれぞれに精神的なショックを受けることがあろうかと思います。

一般的にそのような悪い報せを受けた時は誰でも気持ち的に落ち込みます。奈落の底に落とされるような感じです。でも私達は気持ち的な面でも自然治癒力があると思います。
人によって様々ですが数週間ぐらいで「でもそうは言ってもなあ...今は治療技術も進んでるし...なんとかがんばれば良くなるかも知れない...でもステージが進んでると無理かも知れない...いや頑張ろう...」といったふうに気持ちは揺れながらも約半数の人はなんとか日常生活に支障がないところまで気持ちが回復してきます。
でも30%ぐらいの人は少し軽い落ち込みが残ったままで少し日常生活に支障が出るような状態のままの方もいらっしゃいます。10%ぐらいの方はずっと気持ちが落ち込んだままで鬱病と呼ばれる状態のまま過ごされる方もいらっしゃいます。

私達はその方の気持ちが今どれぐらいかということをまずお聞きしたいと思います。まったく辛さがない状況を0として一番辛い状況を10としたら気持ちの辛さはどれぐらいですか?とお聞きします。またその気持ちの辛さがあることで生活にどれくらい支障が出てますか?と患者さん自身にお聞きします。
これは外から見てなかなか分かるものではありませんし採血をしたからわかるものでもありません。
そこでお気持ちをお聞かせいただき大体の点数で3点〜4点以上であれば積極的・専門的な介入が必要かと私達は考えて活動しています。
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では自分が患者さんになったとして、どういうふうに取り組めば良いのでしょう。
自分ができることとしてはまず人に相談していただきたいと思います。身近な人や患者会やサポートグループもあります。経験者に相談するのも良いでしょうしもちろん主治医や看護師さんに相談してみてください。また精神科や心療内科に相談してみてください。
そしてとにかく辛くて不安なのはありますが心の中を整理してみるのも必要ではないでしょうか。どういうことが一番心配なのか、どういうことが一番不安なのか、そして今すぐ考えなくてはいけないことなのか、少し後で考えることなのかを分けたりとか、正しい情報を集めるかということも必要です。
また頭の中から病気のことが離れないのは当然なのですが、今までできていた自分の楽しかったこと、趣味に打ち込んだり散歩をしたり、あるいはできる範囲内でできるだけ体を動かしてみたり、買い物へ行ったりとか、今までできていた楽しいことを続けてもらうということも必要だと思います。

またいつもとは違う対処方法を試してみるのも良いかもしれません。
この病気に限らず今までの人生の中でいろいろと辛かったこともあったかと思うんです。そういった時に自分どういうふうにして乗り越えてきたか。その方法を思い出してちょっと試してみる。他の患者さんや経験者さんがやってることを試してみる。どうしてがんになっちゃったんだろう、あの時禁煙していれば、といった過去に戻るのではなくこれからできることを考えてみることも重要かも知れません。
でも病気になって不安に思うのは当然のことです。そんな自分が弱いとかダメだというんじゃなくて、自分を責めるのを止める、ということがまず大事なんじゃないかと思います。そしてご自分でできることも当然ですが、まず相談をしていただきたいと思います。
ではどういう時にどこに相談したら良いかなんです。

先程言いました、深いままで落ち込んじゃって何をしても気分が晴れず絶望感が続く場合。抗がん剤治療の後のだるさや吐き気が長引いている場合。自分なりに工夫をしてもどうしても元気が出ない場合。ご自分もしくはご家族で取り組める心のケアについてもっと知りたい場合。ストレスについて知って自分で対処できるようになりたい場合。どうぞお気軽にご相談ください。
そしてがんと知って患者さんは辛いと思いますが、そのご家族も辛いです。この先どうなるんだろう、どう声をかければ良いか分からない、でもご家族としてはいつも通り仕事も家事もしなくてはいけない、お子さんがいらっしゃる場合はその面倒も見ないといけないので悲しんでばっかりもいられません。そしてご家族の誰かが亡くなられた場合、残された家族の悲嘆の反応が年余にわたって続くことがあります。このようにご家族も非常に辛い想いをします。
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こんな場面よくあるんじゃないでしょうか。
奥さんが乳がんだと分かりました。旦那様がとても心配しています。もちろんどういうふうに声をかけて良いのか分からないけどサポートしたい気持ちはいっぱいです。とにかく頑張れと励ます。でも奥さん本人にしてみれば病気とも闘い家族のことも思い精一杯やってる、これ以上何を頑張ったら良いの?と。私達も時々患者さんに言われます。頑張れって言わないでって。ではどういうふうに患者さんを励ませば良いのでしょうか。

ご家族ができる患者さんのメインテナンス。

1)患者さんの話に黙って耳を傾ける
患者さんから辛いという言葉を聞かされると家族は元気づけようとするあまりにそんなこと言わずに頑張ろうよと言ってしまいますが、そうすると患者さんは遮断されたような形になってしまいますので、まず患者さんの辛い気持ちを黙って聞いてあげるのが非常に大事です。

2)病気や死に関する話題に向かい合う
病気や死に関する話題になった時に避けずに率直に話し合うことが大事です。日本の文化としてあまり死について話し合うことは縁起でもないという風潮があります。でも患者さん本人にしてみれば自分が亡くなった後のことをちゃんと相談しておきたいという場面があります。子供の教育方針や経済的なことを元気なうちに相談しておきたいんですね。例えば、患者さんが奥さんに「俺が逝ったらな...」と離そうとしたら「ダメダメ病は気からって言うし死ぬなんて縁起でもないことを言ったらダメ。そんなこと言ったら治るものも治らない。」というふうに励ましているつもりが、患者さんからしてみればシャットダウンされたことになりそれ以上何も言えなくなってしまいます。この話題を言ったらダメなんだなと思います。遠慮のあまりお互いに言えないままに時間が過ぎてしまうことがあります。

人は生きてきたように死んでいくものだと思います。
死を語るということはどのように生きていきたいかということを語ることです。
あまり腫れ物に触るような形ではなく、これまで通りに接する。
これが一番簡単そうで難しいのですが、それを心がけてください。
このように患者さんも辛いですしご家族も辛いかも知れません。
でもそこにお互いに手を繋ぎ合うことで、私達はこうなりたい、こうしたいんです、これが緩和ケアだと思います。
どうぞ何かありましたらお気軽に声をかけてください。

>> 近幾大学医学部附属病院 心療内科
「皆様と繋がってひとつのラブリーホールチームができました」 大阪南医療センター 緩和ケア推進室長 上島 成也
皆様、緩和ケアについてご理解頂けましたでしょうか?
私達は常に手を繋いでいます。<テープをみんなで持ちながら>
皆様と一緒になってラブリーホールチームとして、次の井上あずみさん、ゆーゆさん親子のお話しを拝聴したいと思います。
これで皆様と繋がってひとつのラブリーホールチームができました。
有り難うございました。
皆様と繋がってひとつのラブリーホールチームができました

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