ここからは看護師の立場として皆様に緩和ケアについて知っていただきたいことをお伝えさせていただきます。
皆様は認定看護師という言葉は聞き慣れない言葉だと思います。聞いたことあるという方は手を挙げて頂いても宜しいでしょうか?
何人かの方が手を挙げてくださいましたけども、認定看護師とはここにも書いておりますように、日本看護協会に認定された看護師のことで特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有することを認められた看護師のことをいいます。
この認定看護師はすべての分野で21分野あります。もちろんがんだけではありませんが、ここに上げておりますのはがん領域の認定看護師の数になります。
領域は5つありますが、この中にそれぞれ制定された年数は違いますが、私は緩和ケアというところで全国で2000人ほど居ますが、その中の1人として活動をしています。
では認定看護師って何なの?普通の看護師とは何が違うの?ということですが、「実践」「指導」「相談」という三本柱の役割が認定看護師には与えられていまして、がん患者さんとその家族の辛さに対して直接的に技術的に看護を行うことの「実践」、病院の職員に対して行う「指導」、病院の職員からの「相談」を受けることで看護で困ってることへの対応を行うということになっています。
皆様の看護師のイメージというのは、血圧を測ったり注射や採血をしたり手術室で先生の介助をしたりというのがなんとなくテレビのドラマとか映画で見るようなイメージになると思います。私も血圧測ったり採血をしたりもしますけど、そのイメージとは少し異なる緩和ケアサポートチームというところに所属していまして、そこで活動をしています。
緩和ケアというのが今回のテーマにもなっていますので、詳しく説明いたします。
がんの治療やその後の療養生活は患者さんやご家族に対して体や気持ちで生活上様々な辛さを引き起こす場合があります。この辛さを和らげ豊かな人生を送ることができるように支えていくためのケアを緩和ケアといいます。
昔はがんの治療ができなくなったら緩和ケアですね、というイメージがあったと思いますが、現在ではがんと診断された時から開始されるものです。もちろんがんの治療の時にも必要になってくるものです。
では私が所属している緩和ケアサポートチームとはということです。
がん患者さんとご家族様を中心に、主治医、病棟看護師と連携する専門の医師や看護師、薬剤師、臨床心理士、管理栄養士、理学療法士、医療ソーシャルワーカーからなるチームとなっています。患者さんの抱えている様々な体の辛さへの専門的な対処や、気持ちの辛さを和らげる治療やケアを行っています。
では一体体の辛さとはどのようなものがあるのでしょう。テレビで見たり身近な患者さんと接して思い当たることはあると思います。痛みであったり息苦しさであったり吐き気であったり体のだるさ、食事の量が減ったりなかなか摂れないであったり、こんなことがイメージできるかなと思います。
もちろんがんと診断された時からこのような症状を持っておられる方もいますが、治療していく中でこのような症状が出てくる方もいらっしゃいます。
また次のようなことが起きるんじゃないかなあと不安の原因になってくることもあります。がんの患者さんがいます。体の辛さがあります。でもこんな症状があっても仕方ないのかなあ。治療している間は痛みを我慢しなくてはいけないんじゃないかなあ。痛み止めを使っていたらそのうちに効かなくなるんじゃないかなあ。緩和ケアということは私はもう先が長くないんじゃないのかなあ。先程からの話の内容を聞いて頂いていると分かると思いますが、これらはすべて誤解です。
病気だからしょうがない→全然しょうがなくないです。痛みは我慢する必要はありません。
痛み止めを使っていたらそのうちに効かなくなるんじゃないかなあ→たくさんのお薬があって効かなくなることはありません。
緩和ケアということは私はもう先が長くないんじゃないのかなあ→緩和ケアは治療開始の時から行われるものです。
ここで体の辛さのあるAさんを例にご説明をしていきたいと思います。
まず体の辛さについてです。
抗がん剤の治療をしてるAさん。最近痛みが辛くなってきたかなあ、でも治療中だから仕方ないかなあ、と思っています。このような患者さんたくさんおられます。でもその体の辛さを我慢してしまうと、痛みでご飯も食べられなくなってきた、夜も痛みで眠れない、体力が落ちてしまった、このままじゃ治療に耐えられないんじゃないかな、というふうに治療のことを考えられなくなっていきます。
では何故体の痛みを我慢してはいけないのかというと、体の辛さというのは不眠、不安、怒り、体の機能の低下に繋がったり、痛みで体の活動量が減ってしまったり、抑鬱になったりと、様々なことと関係しています。体の辛さがあることで他の症状にも繋がっていき、より体の辛さを辛くしてしまう傾向になります。
ではどのように体の辛さを抱えている患者さんに関わっていけばいいのでしょうか。
患者さんご本人が辛さをご家族や看護師に直接伝えて頂くことができる場合は、すぐに対処することができると思います。でもこのAさんのように我慢してなかなか表に出して頂けない場合は、その体の辛さが影響している日常生活の何らかのことから引き出すようにしていきます。
Aさん最近お食事の量が減っていますね?といったような質問から患者さんがどのような辛さや痛みを抱えているのかを引き出し、困っている部分へのサポートを考えていきます。
次に気持ちの辛さについてです。
まず病気が分かったことで、何もやる気が起きない、気持ちが沈んでいる、このまま生きていくのが辛いなど、人それぞれ様々な気持ちの辛さがあります。
ショックなことを聞くと誰もが落ち込みます。しかし落ち込みながらも回復していくという経過をたどると思いますが、それがなかなか回復しないことで日常生活に影響が出てしまうことも考えられます。また気持ちの辛さは体の辛さがある場合、痛みがどんどん強くなっているから病気が悪くなってるんじゃないかな、これからどうなっていくのかな、家族に迷惑をかけるんじゃないかな、不安で眠れない、というような気持ちの辛さにも繋がっていきます。
気持ちの辛さがある患者さんへは、治療、これからのこと、家族のこと、仕事のこと、治療費のこと、そういう気持ちの辛さを和らげるためには、ゆっくりお話しを聞かせて頂いて気分転換する方法を患者さんと一緒に考えます。
解決できる内容であれば情報提供を行っていき、問題解決を進めるように関わりを持っていきます。
ただ、体の辛さがある場合は考えることができません。皆様も頭が痛かったりお腹が痛かったりすると、他のことを何か考えるのはなかなかできませんよね。なのでそういう時には、考えることを邪魔している体の辛さを少しでもなくすように関わっていくことが重要だと考えています。体の辛さはいろいろな他のことにも繋がっていき悪循環にもなっていきますので、まず体の辛さを取り除くことはとても大切なことなのです。
このあとは、この体の辛さを取り除く方法について、薬剤師さんや放射線科医師よりお話しを聞いていただきます。
当院には病院の正面玄関を入って左側にがん相談支援センターがあります。どんなことでも相談を受け付けていますので、お気軽にお立ち寄り頂ければと思います。
パンフレットも外来や病棟に置いています。今お話しした内容も書いていますので一度手にとって見て頂けたらと思います。
有り難うございました。
>> 大阪南医療センター がん相談支援センター