緩和ケアというものがどのようなことを指すのかと言うことがWHOから2002年に定義が出されました。苦しみとかを予防して和らげることでQOL(生活の質)を改善していこうということが書かれています。
かつては緩和ケアというものは、治癒が困難で余命が限られた患者さんの苦痛を和らげるものであって、病気を治すことができなくなった患者さんが対象と考えられてきましたが、現在ではQOLの向上に寄与する医療行為全般を緩和ケアと呼ぶようになっております。
病気の進行具合に関わらず、また終末期・末期に限らない病気だと分かった段階からシームレスな関わり方というのが主流です。
さて放射線治療とは何なのかということです。
がん治療における三本柱ということを聞かれたことがあるかも知れないのですが、がんの治療には大きく「手術」「放射線治療」「化学療法」と3つありましてそれぞれに特徴があります。放射線治療の一番大きな特徴としまして、手術とは違い直接的に切除ということではないので、病気のある臓器の機能や形体を温存できるということで手術が困難な時でも治療が可能です。一言で言うと「切らずに治せる」ということが放射線治療の最大の特長かなと思います。
放射線は何故効くのか、という原理的なことを説明します。
放射線を照射することによってがん細胞のDNAが傷つき、そのことによってがん細胞が死滅してしまう、ということです。また直接照射されたことによってその細胞が生き残ったとしてもDNAに傷がついているのでそれ以上細胞が増殖することができなくなるということで、最終的に治療効果に繋がるということです。手術や抗がん剤とは違い放射線治療は放射線が当て終わってからも時間をかけて腫瘍が徐々に縮んでいくということが特徴です。
緩和領域における放射線治療の考え方があります。
放射線治療というのは治療の目的によって、「根治照射」と「緩和照射」に大別されます。
「根治照射」は、がん細胞の根絶を目指すということで言い換えると病気を治すということが目標になりますので、しっかり病気の細胞を焼き切るために大線量を当てる必要があります。50グレイ、70グレイ、80グレイ当てる必要があります。治療期間は1ヶ月〜3ヶ月といった長期が必要になります。病気をしっかり治すには周りの正常な細胞にも放射線がある程度当たりますので副作用が伴ってきます。あくまで病気を治すといった目的があるので回復を見込めるぐらいの副作用というのは許容され患者さんにも頑張ってもらうことになります。
対して「緩和照射」は、がんによる症状の改善や苦痛の軽減を図る目的で行いますので必ずしも病気を治すのに必要な線量は必要ないということになります。20グレイから30グレイ程度ですので治療期間も数日〜数週間、大体1週間〜2週間、場合によっては1日で終わるケースもあります。病気を治すのではなく苦痛を和らげる、症状を取るというのが目的ですので、できる限り治療に伴う副作用の出現を避ける必要があります。治療期間や副作用も患者さんの苦痛の原因になりますので、治療は患者さんの全身状態や症状や予想される余命等を踏まえて決定していく必要があります。
まず予後(どのくらい生きられるかという予測)が短いとされる場合は、治療に伴う負担というのはできる限り減らしていく必要がありますので当てる回数を減らして治療期間もできる限り短くしていきます。
放射線治療1回に費やす時間は大体15分〜20分程度かかりますが、それもできる限り短くして負担を減らすという配慮も必要になります。予後が短いということは残された時間も限りありますので、治療によって引き起こされる副作用と闘わなくてはいけなくなるというのは治療の考え方から外れてしまうので、治療中に生じる副作用は最小限に抑えなくてはいけません。ですので治療後の後遺症に関してはあまり気にしなくてもいいと言われています。なぜなら放射線治療にかかる後遺症の出現というのは数ヶ月から数年後に出てくる可能性がありますので、予後が限られている患者さんにおいては問題ないということです。そもそも後遺症が出るほどの線量を当てる必要がないためそもそも後遺症が出ないと言われています。
あと数週間とか1ヶ月以内といったあまりに予後が短い患者さんの場合は、残念ながら放射線治療の効果が発現するまでに間に合わないということで、治療行為自体が患者さんの苦痛を増強してしまう可能性があるので放射線治療を行わないケースもあります。
逆にある程度の長期生存が期待される場合です。これはなかなか予後をどのくらいと判断するのは難しいのですが、ある程度長生きできそうという場合は、より効果的で持続的な治療というのを目指す必要があります。そのためより多くの線量を当てて治療することになります。なぜなら当てる量が多ければ当然病気を縮小したり消えてしまえる場合もあります。照射した病原を大きくならないようにコントロールする局所制御の確率が上がりますので、結果的により長期間、病気によって引き起こされた症状が抑えられるということになります。治療中の副作用に関しては治療効果と合わせてある程度許容されるということになります。放射線治療終了後の副作用というのは大体数週間から1ヶ月で元に回復しますので、多少治療中はしんどくてもその後数ヶ月、数年と治療効果が持続するのであれば許容されるのではないかなと思います。この辺りの判断というのは放射線治療の効果と副作用の加減というものがどの程度に留まるかということを考えて判断します。治療後の後遺症の発生には最大限配慮しなくてはいけません。何故かというと、長期の生存率が高いということは、後遺症が出現する数ヶ月から数年先も患者さんはお元気で生活されている可能性もありますので、後遺症が出てしまうと非常に問題になりますので配慮していく必要があります。ですので考え方としては根治照射に近くなっていくわけです。
あとは一度治療したところがまた痛みが出てきたり他の症状が出てきてもう一度放射線治療が必要になるケースもありますし、当てた場所とは別の場所でも前の放射線治療が影響してくる可能性もありますので、将来的な放射線治療の必要性というものも考慮して、最初の治療方針を考える必要もあります。
IMRT等の高精度な放射線治療が緩和領域でも有用なケースも最近では増えてきています。
まず予後(どのくらい生きられるかという予測)が短いとされる場合は、治療に伴う負担というのはできる限り減らしていく必要がありますので当てる回数を減らして治療期間もできる限り短くしていきます。放射線治療1回に費やす時間は大体15分〜20分程度かかりますが、それもできる限り短くして負担を減らすという配慮も必要になります。予後が短いということは残された時間も限りありますので、治療によって引き起こされる副作用と闘わなくてはいけなくなるというのは治療の考え方から外れてしまうので、治療中に生じる副作用は最小限に抑えなくてはいけません。ですので治療後の後遺症に関してはあまり気にしなくてもいいと言われています。なぜなら放射線治療にかかる後遺症の出現というのは数ヶ月から数年後に出てくる可能性がありますので、予後が限られている患者さんにおいては問題ないということです。そもそも後遺症が出るほどの線量を当てる必要がないためそもそも後遺症が出ないと言われています。あと数週間とか1ヶ月以内といったあまりに予後が短い患者さんの場合は、残念ながら放射線治療の効果が発現するまでに間に合わないということで、治療行為自体が患者さんの苦痛を増強してしまう可能性があるので放射線治療を行わないケースもあります。
逆にある程度の長期生存が期待される場合です。これはなかなか予後をどのくらいと判断するのは難しいのですが、ある程度長生きできそうという場合は、より効果的で持続的な治療というのを目指す必要があります。そのためより多くの線量を当てて治療することになります。なぜなら当てる量が多ければ当然病気を縮小したり消えてしまえる場合もあります。照射した病原を大きくならないようにコントロールする局所制御の確率が上がりますので、結果的により長期間、病気によって引き起こされた症状が抑えられるということになります。治療中の副作用に関しては治療効果と合わせてある程度許容されるということになります。放射線治療終了後の副作用というのは大体数週間から1ヶ月で元に回復しますので、多少治療中はしんどくてもその後数ヶ月、数年と治療効果が持続するのであれば許容されるのではないかなと思います。この辺りの判断というのは放射線治療の効果と副作用の加減というものがどの程度に留まるかということを考えて判断します。治療後の後遺症の発生には最大限配慮しなくてはいけません。何故かというと、長期の生存率が高いということは、後遺症が出現する数ヶ月から数年先も患者さんはお元気で生活されている可能性もありますので、後遺症が出てしまうと非常に問題になりますので配慮していく必要があります。ですので考え方としては根治照射に近くなっていくわけです。あとは一度治療したところがまた痛みが出てきたり他の症状が出てきてもう一度放射線治療が必要になるケースもありますし、当てた場所とは別の場所でも前の放射線治療が影響してくる可能性もありますので、将来的な放射線治療の必要性というものも考慮して、最初の治療方針を考える必要もあります。IMRT等の高精度な放射線治療が緩和領域でも有用なケースも最近では増えてきています。
次は具体的にどういったものが放射線治療の対象になるかということです。
がんというのは進行と共に様々な症状や苦痛を引き起こします。代表的なのは「骨転移による痛みや骨折」「腫瘍による脊髄圧迫による麻痺や排便排尿障害」「頭部転移による意識障害・運動障害、ふらつき・頭痛」「気道閉塞」「血管閉塞」「通過障害」「出血」などは放射線治療によってそれら症状の改善が期待できるものです。
代表的な「骨転移による痛みや骨折」の治療に関して取り上げます。
骨は肝臓・肺・脳と並んで印象的に転移が起こしやすい場所といわれています。病気の種類によって骨転移が出やすい出にくいがありますが、前立腺がんや乳がんは非常に骨転移が多いと言われており、患者さんの大体7〜8割に骨転移が出ると言われています。肺がんですと大体40〜50%骨転移が出ると言われています。骨転移が進行すると疼痛であったり病的骨折、脊髄圧迫などの症状を引き起こします。痛み・骨折・神経症状等を引き起こすので骨転移というのは日常生活に非常に影響しますのでQOLを著しく損ないます。骨転移に放射線治療をすることで60〜90%の症例で痛みが治療前より改善すると言われております。中でも20〜30%の症例では痛み止めが必要なくなる完全に痛みが取れる状態まで持って行くことが可能と言われてます。放射線を当て始めてから治療が終わるまで待つ必要はなく治療開始されて徐々に除痛効果は出てきまして大体1ヶ月〜2ヶ月後に最も痛みが取れてる状態になると言われております。これも非常に幅がありまして、1回当てて痛みが出ないという方も居れば、大体除痛効果の持続期間は平均で6ヶ月程度、半年後と言われております。当てる回数は一般的に30グレイ10回です。土日祝日を除いて平日毎日治療することが世界的に標準ですので大体2週間の治療になります。あとは患者さんの予後がどのくらいかによって、あまり治療に時間をかけたくないという場合は20グレイ5回で1週間の治療、もしくは8グレイ1回で1日だけという治療をされることもあります。幅はありますが大体この3パターンかなと思われます。回数が多い方が痛みを和らげる効果が長続きすると言われておりますが、治療効果自体に差はないので苦しんでいる患者さんの場合は1回だけ当ててあげるのも手かなと思います。痛みを取るだけではなく当てた後は骨の強度が回復していきます。再骨化と呼ばれる状態なのですが再骨化によって病的骨折を予防することも放射線治療によって可能です。大体3ヶ月後くらいから再骨化が始まると言われており、一度溶けた骨の場合は形は変わりますが骨は回復します。
がん治療において、様々な痛みからの解放というのはQOL(生活の質)を改善します。日常生活における歩行機能の維持・向上というのは予後の改善に非常に寄与します。適切な時期に適切な治療を行うことが重要です。
緩和医療において放射線治療の果たす役割は非常に重要であると言えます。
>> 大阪南医療センター 放射線科