• がん疾患センターについて
  • がん治療の流れ
  • 診療の内容
  • 情報提供
  • 医療関係者向け情報
情報提供
  • イベント情報
  • がん診療アップデート

2016年5月28日開催 第17回 がん診療アップデート 開催レポート

肱岡 泰三 先生の講演

「肝臓がん」 大阪南医療センター 副院長 肱岡 泰三
本日は肝臓がんの予防について絞ってお伝えしたいと思います。
現在日本でがんで亡くなられている方が年間36万人ですが、そのうち肝臓がんで亡くなられている方が約3万人で5位となっています。
ただし、日本における肝臓がんは1970年以降ずっと増えてきましたが2000年ぐらいから減る傾向にあります。特に男性で減る傾向にあります。なおかつ日本における肝臓がんの原因がC型肝炎ということが分かり、慢性肝炎から肝硬変になり肝臓がんになる方が8割ぐらいいました。それが最近では5割ぐらいまで減ってきました。つまり肝臓がんで亡くなる方が減ってくる中でなおかつC型肝炎が原因で肝臓がんになっている方が減って来ています。逆に増えてきているのはアルコールの多量摂取、糖尿病・高脂血症・脂質代謝異常等の生活習慣病が原因の肝臓がんがあります。
大阪南医療センター 副院長 肱岡 泰三
スライドの写真
さて、C型肝炎が原因で肝臓がんになる方が減る理由ですが、肝炎ウィルスから肝臓がんが発生する順序として、肝炎が自分の知らないうちにどんどん進行し肝硬変になり肝臓がんが出来やすくなるからなのですが、この階段を上るのを抑えるのが肝臓がんの発生を抑えるということになります。肝炎がおこっているかどうかを調べるにはGOT、GPT、ALT、ASTが上がっているかどうかを見るだけで済むわけです。インターフェロン治療というのがC型慢性肝炎に対する治療として保険適用できたのが1992年で、それから14年経った現在C型肝炎からの肝臓がんの発がんが減っている理由はインターフェロン治療によって肝炎ウィルスが体の中からいなくなり肝炎がおこらなくなった場合に肝臓がんの発がん率を下げられるといった事実に基づいています。すなわちC型肝炎がどんどん減っているから肝臓がんがどんどん減っている、トータルとしての肝臓がんで亡くなる方が減っているということが言えるのです。このインターフェロン治療による肝炎ウィルスが上手くいけばいくほどC型肝炎からの肝臓がんが日本からなくなるということになるのですが、それについてつい最近、著明に治療効果を改善してくれる飲み薬での治療法が開発されました。それも副作用がほとんどなく。そのおかげでインターフェロン治療が使えなかった人も治療が受けられるという薬です。

日本におけるC型肝炎治療における進歩について見ていきますが、1型高ウイルス量というのはインターフェロン治療の中でも効きにくいタイプで日本のC型肝炎の患者様の七割を占めるタイプですがこのタイプに対する治療法の歴史と治療成績を見てみますと、C型肝炎ウィルスが発見されたのが1989年で27年後の現在では飲み薬だけでウィルスを完全に排除できる様になりました。こんなことが起きるなんて私自身信じられませんが事実です。はじめは低かった直効率はDAAs製剤とインターフェロンの併用によりどんどん高くなり治療効果が上げることができるようになりましたし、最新の飲み薬を使うことでインターフェロンを使わなくてもそれ以上の治療効果を上げることができるようになりました。
スライドの写真
スライドの写真
最終兵器のお話しをさせていただきます。レジパスビルとソホスブビルという薬が混ぜ合わされた一錠の薬です。それを毎朝一錠三ヶ月飲むだけです。C型肝炎治療をしたことがない人もインターフェロン治療が効かなかった人もほぼ100%効きます。私が担当した患者様50〜60人の方に飲んで頂きましたが「ほんまに効くんでしょうか?」というぐらい副作用がないのです。今までインターフェロン治療した方が「今までの治療はなんだったのですか?」というぐらいです。メインのソホスブビルという薬は耐性変異が起こりにくいので薬が効きにくくなりにくく、1日1回の飲み薬で他の薬との相互作用はほとんどありません。ただし腎臓の機能が悪い人には使えないということがあります。海外でもこの治療で15万人の方が治療されてますので確かな実績もあるということです。
インターフェロン治療をして効きにくいタイプの人にはどういうものがあるかと研究されました。1型高ウイルス量が多くて年齢が高くて他の薬が効きにくいとかということがありましたが、この薬はまったく関係ありません。インターフェロンを含む今までの治療で治療の対象にならないといわれていた人、貧血が進んでいる人、血小板が少ない人、鬱病の人、間質性肺炎の人、自己免疫疾患の人でもこの薬で治療できます。またインターフェロン投与中で副作用があり中止した人でも治療対象になります。ですのでC型肝炎治療を受けたくても受けられなかった人でもこの薬で助けることが出来るようになりました。今までインターフェロン治療の最終形と言われていた飲み薬とインターフェロン・リバビリンを併用した治療で約75〜80%ウィルスを排除することが出来ますが、それに失敗した場合でもハーボニーという薬は重複する作用する場所がないので前治療の影響を受けることなく有効な著明な改善効果が得られる薬です。実際、インターフェロン・リバビリンにプロテアーゼを飲んで治療が出来なかった人にこのハーボニーという薬で治療した場合の治療効果は100%というデータがでています。

2015年9月に発売となったこのハーボニーの薬価が一錠8万円と高価であったため2016年4月から30%引きになりましたが、それでも全期間飲むと460万円と非常に高いです。その後に出た腎臓が悪くても使える薬が450万円となっており、大体400〜500万円かかります。C型肝炎には1型と2型がありますが2型にはこの薬は使えません。なぜならレジパスビルは2型には効かずソホスブビルの効用しかなく効果は60%しかないためです。2型にはリバビリンを併用するというかたちで使っていますがそれでも効果は95%ぐらいになります。治療費は高価になりますが生涯治療費と考えると割安と言えますし、日本は医療費助成制度があります。患者様自己負担額のほとんどを国と地方自治体が折半してくれます。C型肝炎治療のガイドラインではC型肝炎に罹っている人(がんが進んでいたり肝臓がんが発病している方は対象外)については治療をしましょう、特に高齢者で肝炎が進んでいる方は出来るだけ早く治療しましょう、ということです。ただし若くて病気が進んでなくてほぼ正常の方については考えてからやりなさいということです。経済的な問題だけではなくて特に2型の方への現在の治療をおこなっても95%にしか効かないので20人に1人は薬が効かなくなります。今後副作用が少なくて治療効果が100%といったもっといい薬が出てきても、その治療効果を享受できなくする可能性があるからです。

ウィルス肝炎の治療費助成の申請の仕方ですが、治療を受ける方が属する世帯全員の市町村民税課税年額の合計額に応じて患者様一人一人の自己負担額が決定されます。つまりたくさん稼いでいてたくさん税金を払っている人は月2万円、普通の人は月1万円で4ヶ月の治療をしても4万円で済むということです。その方法としては退院治療の受給者証の交付申請書を保健所に提出しなくてはいけません。書類は保健所にあります。そしてこの治療をするのに適した患者様ですよといった、専門の医師の診断書が必要になります。河内長野市で肝臓がん専門医を持っている内科医がいるのは大阪南医療センターのみです。現在大阪南医療センターには7名います。そして患者様の氏名が記載された被保険者証の写し、患者様が属する世帯全員の住民票の写し、患者様が属する世帯全員の住民税納税証明書を添付して保健所に提出します。注意していただきたいのは、発行された受給者証は4ヶ月しか有効期限がないので治療開始予定月をきちんと決めてから申請書に記入してください。保健所に提出された申請書類は毎月10日前後に医者が集まりそれをすべて審査します。審査の結果がOKであればその月末には受給者証が患者様に届きます。それを受けた上で治療を開始するといった流れです。この期間は約一ヶ月と少しかかりますので、治療開始予定を診断書発行・申請書類作成準備の大体二ヶ月後に設定するということを我々はおこなっています。
スライドの写真
スライドの写真
実際に大阪南医療センターでどれだけの方が飲み薬のインターフェロン治療をおこなったかというと、2015年11月から2016年5月までで導入したのが63人、ソバルディとリバビリン併用で2型の治療が8人です。このハーボニーという1型の治療をおこなった63人の内訳は、女性が39人で男性が24人、年齢ですが、平均は67.3歳で中間値が70歳ということは半分が70歳以上ということです。1型の治療に関してはほとんどが治療開始4週間目までにウィルスが消えており、治験通り100%の治療効果がありました。2型の治療に関しては8人の内1人の方に治療が終わってからまたウィルスが出てきてしまいウィルスを排除できなかったということがあり、この方については次の治療法が難しい状態です。
今現在、C型肝炎の患者様の状況を統計で見ますと、150〜200万人ぐらいの感染者がいるとされていますが、治療でウィルスを排除できたのは20〜30万人ぐらいです。今現在治療をしている人が50万人ぐらいです。ただし何の検査もせずに肝炎に罹っているはずだけどC型肝炎に罹っていることも知らない人が50万人ぐらいいるのではないかと言われています。

今日皆さんに持ち帰って頂きたい私からのメッセージです。まずB型肝炎・C型肝炎に感染しているかどうかを確認してください。かかりつけの先生に血液検査をしてもらうだけでわかります。もし肝炎ウィルスに感染しているということが判明した時は、肝臓専門医にぜひ受診してください。病気の進み具合と治療方法の相談をしてください。今更C型肝炎の治療なんて!と思われてる方はいませんか?今ならまだ間に合うかもわかりません。素晴らしい薬が開発されました。今こそ肝臓専門医を受診するべきです。もし皆さんが受診してこの治療を受けることができれば10年後の肝臓がんの死亡率は半分以下になります。ぜひご協力頂きたいと思います。

ページの先頭へ