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2016年5月28日開催 第17回 がん診療アップデート 開催レポート

吉村 一宏 先生の講演

「前立腺がんのロボット手術」 近畿大学医学部附属病院 泌尿器科 吉村 一宏 教授
本日は泌尿器の中でも前立腺がんのお話しをさせて頂きます。
最近も話題となっていますが前立腺がんの治療が変わってきています。最新の治療として皆様もテレビや雑誌などでもご覧になっていると思いますが、ロボットを使った治療というのが最先端の治療ということになってきていますので、後半はそのお話をさせて頂きます。
近畿大学医学部附属病院 泌尿器科 吉村 一宏 教授
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さて前立腺がんについてですが、有名な方も前立腺がんになりました。天皇陛下です。天応陛下が前立腺がんになったのは平成15年ですから、今から13年前に手術を受けられました。その手術をされたのが今日特別講演に来られている垣添先生です。当時は国立がんセンターの部長でしたが東大の先生と一緒に天応陛下の手術をされました。その先生が本日来られてお話しをされるということです。
あと芸能人では、高倉健さん、間寛平さん、三波春夫さんも前立腺がんになっています。政財界では森元首相、あとは読売新聞の渡部元会長などです。このような有名な方たちとなると日本の名人と呼ばれる先生に手術をしてもらうことが多いわけですが、現在のロボットが出てきた時代になりますと、それこそ名人の先生が20年、30年かけて磨いてきた手術の技術を卒業10年目の先生であってもその技術を使えてしまうという、そのような時代になってきました。

前立腺がんとは何か、について少しお話しします。前立腺がんには臨床病期というのがあります。いわゆる病期の進み具合です。病期が進むとがんが進行して最終的には他の臓器に転移します。転移をしてしまうと手術はできないのが一般的で、前立腺がんの場合はホルモン治療というものをおこないます。あるいは転移はしてなくて進行していなくても体力的な問題がある場合や年齢の問題がある場合や合併症がある場合となるとホルモン治療をおこなうことがあります。放射線治療もおこないますがその場合は大体早期(T2)におこなわれるということです。手術はT3といって少し進行している人でも治る可能性が期待できるので手術を勧めることもあります。
スライドの写真
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前立腺がんの手術についてですが、簡単に言うと精嚢と前立腺を一緒に取ってしまうというものです。この手術の合併症としてはひとつは尿漏れ、もうひとつは勃起不全があります。手術の仕方は、昔からおこなわれている開腹手術、その次に出てきた内視鏡・腹腔鏡手術、今はダヴィンチというロボットを使ったロボット手術、こういう時代の変遷があります。開腹手術というのはお腹を切って前立腺を全部取る手術。内視鏡・腹腔鏡手術というのはお腹に小さな穴を5つ程あけお腹の中に棒状のトロッカー、カメラ、鉗子を入れてテレビモニタを見ておこなう手術です。傷が小さく出血が少ないですが難しい手術のため手術時間が長くなるという問題点があります。この問題点を解決したのがロボット支援手術、いわゆるダヴィンチです。このロボット手術はどのような発想で出てきたかというと、一番初めはNASA(アメリカ航空宇宙局)やアメリカ陸軍が宇宙開発や軍事用に離れた場所から操作するようなロボットを開発したことからです。例えば湾岸戦争で怪我した兵士をアメリカにいるドクターが治療できないだろうか、といった発想から生まれてきたのがこのロボット手術であります。これが実際医療現場で使われるようになったのは2001年で、アメリカの医療現場で初めて使われるようになりました。現在のダヴィンチの様なものが出てきたのは2006年ですから今から10年前です。現在私たちが使っているのは、執刀医がコンソールと呼ばれるモニタを見て離れた場所のカートに乗せられた患者の上にあるロボットを操作するものです。日本では4年前の4月から保険適用になりましたので保険診療で受けることが出来ます。良い点は、出血量が少ない、傷口が小さい、痛みが少ない、回復が早い、機能温存(尿失禁・勃起不全といった合併症が内視鏡・腹腔鏡手術に比べて少ない)というメリットがあります。
このロボットはアメリカで約2300台、アジアで約400台導入されており、アジアの導入台数の半分の約200台が日本にあります。日本で東京に次ぐ二番目に大阪が多く18台。これは2015年9月時点のデータですので現在はもっと増えています。
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鉗子が全くブレずに縫合することは人間では不可能です。それができるのがロボット手術です。どんどん普及してきています。どのような患者様に手術するのが良いかといいますと、前立腺に限局している(前立腺からがんが出ていない)のが理想的です。一般的には75歳以下が良いと言われています。しかしロボットと言えども手術ですから危険性はゼロではありませんので、ロボットを使った手術の危険性をご理解頂ける方になります。ガイドラインでは、期待余命10年以上の方、腫瘍マーカーが10より低い方、悪性度が高くない方、限局している方となっています。 近畿大学医学部附属病院泌尿器科では2015年で660例の手術を行っております。放射線治療やホルモン治療、ロボット手術も行っておりますので、患者様が希望する手術方法や治療方法で治療しています。ご興味のある方は、近畿大学医学部附属病院 泌尿器科 ホームページをご覧ください。

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