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2017年5月27日開催 第18回 がん診療アップデート 開催レポート がんの予防・早期発見

田中 覚 先生の講演

「乳がんの早期発見」 大阪南医療センター 乳腺外科医長 田中 覚
乳がんに関しましては予防というのは中々難しいです。やはり早期発見が一番重要ということであります。本日は女性の方も多いので、乳がん検診についてもお話ししたいと思います。

まず当センターの乳腺外科についてお話しします。 2016年4月より乳腺外科を新設致しまして、現在私を含めまして常勤が2名、月曜日に非常勤が1名のこの3名で外来診療を行っています。
ちなみに乳腺専門医という資格は河内長野市で私一人しか居ないと言うことだそうですので、貴重な人材ということです。[会場笑]
本日の公演の内容ですが、(1)乳がんの頻度(2)乳がんの進み方・症状(3)乳がん検診 でお話しを進めて参ります。
大阪南医療センター 乳腺外科医長 田中 覚
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まず乳がんの頻度についてです。
乳がんは増加傾向にあります。しかも女性の悪性腫瘍では第一位ということです。約20年前は3万人だったのが2015年には約9万人ということで日本人女性の11人に1人が乳がんになるといわれています。欧米は7,8人に1人で日本人よりも頻度は高いのですが、日本人女性も欧米の数字に近づいてきている現状にあります。ちなみに乳腺専門医といわれるのは日本にたった1500人しかいないといわれていますので私たちはしんどい思いをして仕事をしているという現状です。
河内長野市の人口が10万人ということですと、年間80人〜90人の人に新たに乳がんが見つかるということです。もしくは同窓会に行くと乳がんになった知り合いが一人や二人はいるという現状だということです。ですので乳がんは今や決して珍しい病気ではないのです。さらに年齢層も欧米化しつつあります。もともとの日本人乳がんの特徴は40代の方にピークがありましたが、最近は60代の方にピークが来てまして、今後も増えていくだろうと思われます。
スライドの写真
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次に乳がんの進み方・症状についてです。
まず乳房の構造は、乳首に太い乳管が10〜15本束ねられており、そのひとつに葡萄のひと房のような形で乳腺の腺葉というものがあります。腺葉の中の一粒一粒に乳腺の小葉があります。小葉の中で乳汁が作られて乳管を通って乳が出てくるという仕組みになっています。乳がんの多くはこの乳管の中にできるという風に考えられています。
発生は正常な細胞が一列に並んでいるところに徐々に細胞が増殖してきて乳管の中をがんが占めるということになります。それが年月を経過していくとがん細胞が乳管を突き破って外に出て行く(浸潤する)のです。そうすると浸潤性の乳がんというふうになります。乳管を突き破るとそこには血管やリンパ管がありそこにがん細胞が流れていくと全身に転移していく可能性があります。そのようなものが浸潤性の乳がんといわれます。転移の経緯は、がん細胞が発生して増殖すると乳房の中で大きくなったりリンパの流れを通って腋のリンパ節とか鎖骨周囲のリンパ節に転移していきます。あるいは血液の流れに乗って肺や肝臓や骨というところに転移をしていくということになります。
スライドの写真
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なぜ乳がんが怖いのですかというと、直接隣へ広がり、リンパ管を通ってリンパ節に転移をしたり血液の流れを通して全身(肺や肝臓や骨や脳)に転移することによって、命を左右する状態になるからです。
ではどういう自覚症状があるのでしょうか。やはり一番多いのがしこりを感じるというのが一番多いです。その次に乳首から血が出るということです。大体この2つが多いです。時々、乳の皮膚が窪んできたり乳首が引き攣れたりといったことも症状として出てくることがあります。ごくまれに痛みを伴うことで乳がんが見つかることもあります。ちなみにマンモグラフィーの検診というのは、自覚症状のない乳がんの方を見つける、いはゆる早期発見という目的で行われています。
透明や黄色っぽい乳汁やミルクの様な乳汁が出てくることがありますが、あまり乳がんとは関連が低いといわれていますので様子を観て頂くということでいいかと思います。一方明らかに血液が混ざっていると乳がんの可能性がありますので必ず受診してください。また、乳房パジェット病というものもありまして、乳房、乳頭が湿疹のようにただれる特殊な乳がんもあります。あるいは炎症性乳がんというものもありまして、明らかにしこりというものはないのですが乳房の皮膚に発赤・熱感が発生してそれが急激に拡がるものもあり治療を急がないといけない乳がんもあります。
スライドの写真
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そこで、症状のない人は乳がん検診を受けてくださいということになります。
先程も申しましたとおり乳がんは女性の悪性腫瘍では第一位ですが、治療の進歩があり死亡では第五位ということです。最近では関心も高まってきていることもあり、検診によって発見されることから早期の乳がんの割合が高くなってきています。ですが、乳がん検診の受診率を国際比較で見てみると、アメリカですと受診率は8割ですが日本は4割ということでまだまだ低いです。しかも国内では大阪府が一番低いです。皆さん受診を心がけて頂いた方が良いと思います。

ちなみに当センターの乳がん検診への取り組みは、毎週土曜日午前中に1日15名で月に4回60名の方を対象として行っています。また今年の4月から火曜日にがん総合ドックというものがありますのでぜひ利用して頂きたいと思います。また、マンモグラフィがなくてもご自身で見つけることも出来ます。1ヶ月に1回で構いませんので鏡の前でしこりや引き攣れ、乳首の凹みや乳頭の変化や湿疹などがないかをチェックしていただけたらと思います。そして4本の指の腹でのの字を書くように動かしてしこりや堅いところがあるかを乳房だけでなく腋の下などを手で触る、そして乳頭を絞るようにして血液が混じるような分泌物がないかのチェックもしてください。

本日のお持ち帰りメッセージです。乳がんは比較的治りやすいがんです。ですが早期発見に勝る物はありません。ですので症状があれば乳腺専門医に相談してください。症状がなくても検診を受けるようにしてください。精密検査が必要とされた、もしくは他の病院で疑いがあると判断されたなど、乳房に関することは何でも結構ですので、当センターの方にご相談頂ければと思います。 今後も南河内地区の乳がん地域医療をさらに充実させていきたいと思います。

>> 大阪南医療センター 乳腺外科

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