アグネス・チャンさんの講演(2)
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手術が終わり目が覚めたら看護師さんや先生が「転移してなかったよ!」と言ってくれ、姉は「オッパイが残っていたわよ!」と言ってくれ嬉しくて涙がでました。オッパイは残りました。しかしもし全摘であっても慌てなくていいんです。再建手術というものがあって優れもので程度にはよりますが再現できるみたいです。ですので全摘って言われても慌てなくていいです。
そして仮退院が1日だけ許可されました。しかし一回は外食するようにと先生に言われました。外食に出かけたら何故かすごく混んでいて唯一空いていたのがインドカレー屋さん。入ってすぐに「おー元気そうですね!」と言われました。インドの方は日本の新聞を読まないんでしょう。私は「あ、元気そうって言われた。彼から見たら私は全く普通に見えたんだ。そうか自分だけ意識してるんだなあ。」と思いました。自分が意識しなければ周りも意識しないんだなあと。なんか重い荷物がサーと降りました。それから我家では毎年10月1日はインドカレーよ。おかげさまで気持ちも明るくなって先生からもOKが出て退院しました。9日にイベントに出席し、10日はコンサートしました。その後の中国の人民大会堂コンサートも無事できとても沢山の人達がきてくれ大成功でした。
一週間経たないうちに様々な更年期障害が出て来て本当に辛い日々が続きました。コンサートの日々が続いていたある日、鏡を見たら顔が倍ぐらいに腫れていたんです。アレルギーの薬を飲んでも治りません。しかしもう開演時間が来ました。緞帳が上がった瞬間、みんな声を出して驚きましたね。1曲目終わって紹介が終わっても拍手はまばら。しかし2曲目のひなげしの花を歌ったんです。そうしたら拍手がおこりました。やっぱりこの人はアグネスだったんだ。アグネスはテレビ映りが良いんだなあと思われたかも知れません。でも大事なことを教えてくれました。見た目じゃないということ。確かに顔が少し歪んだ、おっぱいが少し小さくなった、顔も倍ぐらいになった、でも歌なんだ心なんだと教えてくれました。とはいえ、一度腫れると一週間収まらないのでストレスが溜まりました。
それからずっと飲み続け、今年の正月に薬を飲み終えました。今薬を飲んでいる友達や周りの人がいたら、体は慣れてくるし治りますからと励ましてあげてください。飲み終えて半年ぐらい経つんですが、今はすごく調子がいいんです。何でも美味しいし副作用で抜けた髪がどんどん出て来ています。しかしまだ7月6日に先生と相談してあと5年間のみ続けるかどうかを決めなくては行けません。皆さん、よくがんばったねと声をかけてくれますが、他のがん患者さんの副作用にくらべたら本当に軽いものです。
私の乳がん仲間は早期ではなくまだ若い方だったので再発を繰り返しました。その度に辛い治療を受けていてお金もかかります。彼女は小さい子が居たので死んで行く私にお金を使わずに子供に残した方が良いんじゃないのかって言いました。でも私たちは、子供にとっては一日でも長く母親のそばにいられることが一番の宝なんだから、お金の心配をしちゃいけない、子供は背中を見て成長するんだからって励ましていました。しかし昨年残念ながら亡くなりました。そのお子さんの小学校一年生の入学式に行けたのが唯一の救いでした。私たちはこの子はお母さんの一生分の愛情を受けたんだから絶対いい子に育つから大丈夫だよって送り出しました。
現在日本では自分のことは後回しにしてしまう人が多いので検診率は30%です。しかし自分が倒れたらすぐに周りに迷惑がかかります。周りの人の為にも自分の体は守らなくてはいけません。だからぜひ検診には行って欲しいと思います。私がこうやって人の前で話すのも、私みたいに早期発見の人を増やしたいからです。
私はリレーフォーライフからたくさん学びました。ひとつは命は終わらないこと。例えば先に亡くなったリレーフォーライフの先輩達。彼女達はこの世にはいませんが私は彼女を忘れず彼女がやろうとしていたことを勉強して一生懸命活動しています。だから彼女達は私を通して生きているんです。まさしく命のリレーなんです。
結局神様に任せることにしました。しかしこれはがんになったから思えたことなんだと思います。本当は生まれた時から任せるという気持ちで生きていればどんなに毎日が輝いたんだろうと思いました。いつ死ぬかが分からないからこそ生きているのが素敵で楽しいのかな、一日一日が大切なんだって思いました。
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