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長年ホスピスで働きました。ホスピスは素晴らしい場所ですが残念ながら入れる患者様の数は限られています。なぜ限られた患者様だけしか入ることができないのかという想いから3年前に開業しました。「どこで生活をしていても、どんな病気であっても、安心して最期を迎えることが出来る社会を目指す」を理念に掲げて診療をしています。
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しかし私一人ではどんなに頑張っても多くの方をケアすることはできませんので、仲間を増やしたいと考え人材育成も行ってきました。今日はその中で学んだ「苦しむ人に励ましは通じない。では、通じるようにするにはどうすれば良いか」ということをお話ししたいと思います。
成長の自然経過のお話しから始められ、乳児が成長していく過程~自然衰弱の様子を通じて自然経過のお話しを解りやすくご説明いただきました。 励ましが通じない場面でも、励ましではない方法で苦しみを和らげ力になれる方法として「援助モデル」を解りやすく説明していただきました。
苦しみといっても、痛みや息が苦しい、それだけではありません。希望と現実のギャップに開きがあるあらゆる時に苦しみは生まれるのです。それを大きく分類すると、肉体的な苦しみ、精神的な苦しみ、社会的な苦しみ、スピリチュアルな苦しみの4つに分けられます。特にスピリチュアルな苦しみ(スピリチュアル・ペイン)を取り上げます。ドラマ「ビューティフルライフ」というTVドラマを例に取り上げられ、答えることの出来ない理不尽な問いかけにどう私たちは対応するのかをご説明されました。
「支え」それは、健康な時や病気になる前には気がつかない。しかし苦しみを通して見えてくるもの、それは「支え」です。その支えで人は病気が残りながら穏やかに生き続けることができます。支えの1つである「将来の夢」。その夢はこの世の夢だけでなく別世界の夢であっても良いのです。もう一つの支えは「支えとなる関係」。「手を伸ばせばあなたがいてくれる」という気持ち一人では乗り越えられない困難も周りの支えがあれば乗り越えていけるのです。もう一つは「自己決定の自由(自律存在)」。様々な選択肢から自己決定できる自由があること。誰かにゆだねる自由も含まれます。
苦しんでいる人が求めるのは、良いアドバイスではありません。「自分のことを理解してくれている人がいる」と嬉しいし一番の支えになるのです。私たちは「理解することよりも理解者になる」ことで苦しんでいる人の支えになることができるのです。 存在を支える3つの柱。その1つの「時間存在」という柱。人は将来を失うと過去に戻り自分の生きてきた道を振り返ろうとしてその柱は折れ、平面は傾き不安定に。しかし「関係存在」の柱で支えられたとき平面は水平に回復するのです。支えは一人一人違います。自分の本当の支えを見出せたとき、絶望の中でも希望の光を見出すことが出来るのです。
私たちの現場は良いことばかりではありません。私は力になりたいと想いながら力になれない時が多々あります。逃げ出したくなった時に学んだことがあります。それは、「誰かの支えになろうとしている人こそ一番支えを必要としている」ということです。真の力とは、問題を解決できる力ではありません。たとえ解決できない問題を前に弱く無力な私であったとしても、逃げないで最期までその人と向き合う力です。
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当センターがん性疼痛看護認定看護師の野田さつきより花束を贈呈いたしました。 苦しみに向き合う知恵と希望をいただけた素晴らしい講演を有り難うございました。
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