臨床研究部は当初、昭和60年に地方循環器病センターの設置に伴い、循環器疾患の臨床に質の向上をめざし、「系統的血行病態の研究」を行うことを目的として設置されました。その後、平成11年の「国立病院・療養所再編成計画の見直し」において我が国が推進すべき政策医療のうち「免疫異常疾患」の基幹施設、「循環器疾患」、「がん」「骨・運動器疾患」の専門医療施設として位置付けされました。現在、臨床研究部は、(1)免疫異常疾患研究室、(2)循環器疾患研究室、(3)がん研究室、(4)骨・運動器疾患の分野に関連した研究室に、(5)再生医療研究室、(6)治験管理室を加えた6研究室で組織され、精力的に病因・病態の解明や新規の診断・治療の開発に関する研究を推進しています。また、他の研究機関・大学等との共同研究も活発に行われています。

1. 免疫異常疾患研究室(室長:高松漂太)

自己免疫疾患(関節リウマチ、SLE、皮膚筋炎などの膠原病)、アレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症など)、自己炎症疾患(ベーチェット病、脊椎関節炎、SAPHO症候群など)、などの病態形成の分子メカニズムの解明に取り組んでいます。また、癌の免疫療法や自己免疫疾患の疾患層別化方法の開発や、分子標的治療法の治療効果の評価や治療の標準化を目指した基盤研究に取り組んでいます。

2. 循環器疾患研究室(室長:柏瀬一路)

心臓血管部門は虚血性心疾患発症やPCI後の再狭窄の機序、慢性心不全の疫学研究や薬物療法の効果判定、不整脈、特に心房細動に関するカテーテルアブレーションや薬物療法に関する研究を行っています。循環器疾患においては、抗血小板薬や抗凝固薬の服用が必要になることが多いですが、出血という合併症もあるため、薬剤数を減らしたり服用期間を短縮できるかについて多施設共同研究を行っています。  

脳血管部門は脳血管疾患の急性期の画像診断に関しての多施設共同研究を行っており、毎年、英文論文や国内外での学会で成果を発表しています。

3. がん研究室(室長:工藤慶太)

がん研究室では、大阪南医療センターでがん疾患を主に診療する呼吸器腫瘍内科、消化器科、外科、乳腺外科、泌尿器科が中心となって活動を行っている。現在継続中の研究について紹介するが、がん研究室に所属する科は多岐にわたるため、詳細は所属する各科の業績を参照いただきたい。  

2020年度は、当院で初と思われる呼吸器腫瘍内科・泌尿器科・外科・消化器科・薬剤部にまたがる研究として、2020年度の臨床腫瘍学会にて口演(Safety of immune checkpoint inhibitors in patients with advanced malignancy complicated with rheumatoid arthritis 発表者:呼吸器腫瘍内科 工藤)として発表を行っている。 当センターは膠原病合併のがん患者が多いことから、今後も複数の科にまたがってICIの有効性などを検証する研究を行うなど複数科で協力した研究を行っていく予定である。

4. 骨・運動器疾患研究室(室長:平尾眞)

下肢関節外科領域では人工関節置換術においてコンピューター工学技術を活用した手術ナビゲーションを実施し最適なコンポーネント設置を目指し、術後には3次元位置計測システムを用いたADL動作の研究等を行っています。また股関節低侵襲手術進入法にも取り組んでいます。脊椎外科領域では術中神経モニタリングを併用した少侵襲椎体間固定術の有用性、関節リウマチの脊椎病変の治療成績、腰椎手術の費用対効果を研究しています。また、人工知能を用いた歩行解析を、まず脊椎疾患を対象に開始しています。上肢外科領域では、関節リウマチの上肢関節手術の臨床成績を研究しています。リウマチ下肢関節外科・骨代謝領域については、免疫異常疾患研究室の項を参照してください。

5. 未来医療研究室(室長:中原一郎)

動物実験施設