スタッフ紹介

医師名
専門分野
出身大学
専門医資格
中森 幹人
消化器外科部長
がん疾患センター部長
中森 幹人
消化器外科、食道・胃外科、内視鏡外科、がん集学的治療
出身大学
和歌山県立医科大学医学部
和歌山県立医科大学大学院医学研究科
外科専門医(日本外科学会)
消化器外科専門医(日本消化器外科学会)
食道外科専門医(日本食道学会)
内視鏡外科技術認定医(日本内視鏡外科学会)
ロボット手術術者認定(ダヴィンチ)
廣川文鋭
外科医長
廣川 文鋭
消化器外科、肝胆膵外科
出身大学
和歌山県立医科大学
和歌山県立医科大学大学院
外科専門医、指導医(日本外科学会)
消化器外科専門医、指導医(日本消化器外科学会)
日本肝胆膵外科学会高度技能指導医
消化器がん外科治療認定医
外科医長
上野 昌樹
消化器外科、肝胆膵外科、内視鏡外科
出身大学
和歌山県立医科大学
和歌山県立医科大学大学院
外科専門医、指導医(日本外科学会)
消化器外科専門医、指導医(日本消化器外科学会)
肝臓専門医、指導医(日本肝臓学会)
消化器病専門医(日本消化器病学会)
消化器内視鏡専門医(日本消化器内視鏡学会)
日本肝胆膵外科学会高度技能専門医
ロボット手術術者認定(ダヴィンチ、ヒノトリ)
日本肝胆膵外科学会・日本内視鏡外科学会認定ロボット支援肝切除術プロクター(肝部分切除及び外側区域切除;davinchi)
内視鏡外科技術認定医(日本内視鏡外科学会)
Robo-Doc Pilot国内B級(日本ロボット外科学会)
重河 嘉靖
外科医師
重河 嘉靖
消化器外科、肝臓外科、内視鏡外科
出身大学
和歌山県立医科大学医学部
和歌山県立医科大学大学院医学研究科
外科専門医(日本外科学会)
消化器外科専門医(日本消化器外科学会)
肝臓専門医(日本肝臓学会)
消化器内視鏡専門医(日本消化器内視鏡学会)
内視鏡外科技術認定医(日本内視鏡外科学会)
木村 正道
外科医師
木村 正道
消化器外科、大腸外科 、内視鏡外科
出身大学
鳥取大学医学部
外科学会専門医(日本外科学会)
消化器外科専門医(日本消化器外科学会)
消化器内視鏡専門医(日本消化器内視鏡学会)
大腸肛門病専門医(日本大腸肛門病学会)
内視鏡外科技術認定医(日本内視鏡外科学会)
外科医師
田端 宏尭
消化器外科
出身大学
和歌山県立医科大学医学部
外科医師
出口 真彰
消化器外科
出身大学
名古屋市立大学薬学部
和歌山県立医科大学医学部
外科専門医(日本外科学会)
消化器病専門医(日本消化器病学会)
がん治療認定医(日本がん治療認定医機構)
腹部救急認定医(日本腹部救急医学会)
上部消化管内視鏡スクリーニング認定医(日本消化器内視鏡学会)
大腸内視鏡スクリーニング認定医(日本消化器内視鏡学会)
外科専攻医
黒岩 英倫
出身大学
和歌山県立医科大学

診療科の特色

はじめに

大阪南医療センター外科は和歌山県立医科大学外科の初代教授であった中尾行保先生(阪大 昭和6年卒)のご意向で当時の国立河内長野病院(現在の大阪南医療センター)に外科診療を開始しました。まず、1963年(昭和38年)、筒井候彦先生が出向されました。翌1964年(昭和39年)には筒井先生と同級の戸田慶五郎先生にバトンタッチしながら、外科診療の準備をされたそうです。そして、1964年には、中尾外科から篠憲二講師(阪大 昭和25年卒)が医長として国立河内長野病院第二外科を設立され、1965年(昭和40年)4月、国立大阪南病院外科として独立しました。その後、篠憲二先生(後に副院長に昇格)を中心に、数々の先生方の尽力により、大阪南医療センター外科が発展を続け、現在では南河内医療圏には不可欠の存在となっています。篠憲二先生以降の歴代の外科責任者は、田中晋二先生、鎌田義鉱先生、田伏克惇先生、堀内哲也先生に継承され、2023年4月より中森幹人が責任者として外科の運営を行っています。

大阪南医療センターの強み:多職種チームによる外科診療

当センターを受診される皆さまの権利のひとつに「個人の人格や価値観が尊重され、良質な医療を受ける権利」があります。この記載の通り、大学病院に匹敵した専門医療部門が、内科・外科ともに存在します。さらに、診療科の横の連携は非常にスムーズです。当センターに来られたすべてのがん患者さんに対し、診療科の垣根を超えた、チーム医療による持病の治療・管理ならびに安全ながん治療を提供します。医師、歯科医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、言語聴覚士を含めた多職種チームで患者さんをサポートします。心臓や肺、腎臓等に持病があり、他の病院で治療が困難と言われた患者さんに対しても、当院では総合病院の特徴をいかし、循環器科や呼吸器内科、腎臓内科、麻酔科の協力のもと、積極的に治療を行っています。

主な診療内容・取扱い疾患

臓器別治療内容について

上部消化管外科(担当責任者:中森幹人)

食道がんについて

食道はのど(咽頭)と胃の間をつなぐ長さ25cmぐらいの管状の臓器で、大部分は胸の中、一部は首約5cm、咽頭の真下)、一部は腹部(約2cm、横隔膜の真下)にあります。食道がんは食道の内腔をおおっている粘膜から発生します。食道がんは進行すると食道の壁の深くまで浸潤し、リンパ節や他の臓器に転移します。食道がんの95%程度は胸部または腹部食道から発生し、5%程度は頸部の食道から発生します。飲酒や喫煙は食道がんの危険因子とされています。

当センター外科は、日本食道学会認定の食道外科専門医による手術をはじめとする食道がんの集学的治療に対応しています。日本食道学会の「食道がん治療ガイドライン」に沿った標準的な治療を基盤としながら、南河内医療圏にお住まいの患者さんに安心頂けるような食道がんに対する手術に加え、術前後の化学療法や術後の外来まで対応しています。また、手術が出来ない患者さんに対しても、放射線治療の専門医や消化器科、腫瘍内科医と協力し、化学放射線治療を行っています。

当センター外科の取り組みとしては、低侵襲手術に力を入れており、がんの進行度を考慮し、施行可能な患者さんに対しては積極的に胸腔鏡・腹腔鏡による完全鏡視下手術を導入しております。この胸腔鏡・腹腔鏡を用いた内視鏡外科手術では、手術の傷が小さくなるだけではなく、手術中の出血量が少なくなり、術後の傷の痛みも少なくなります。また、超高齢化時代に対応するために、呼吸機能の低下している患者さんには非開胸アプローチによる縦隔鏡下食道手術を行っています。

近年、食道胃接合部(食道と胃のさかいめ)にできたがんを、胃がんや食道がんと区別し、食道胃接合部がんといいます。わが国でも、発生頻度が増加しているといわれています。手術は、下部食道噴門側胃切除が行われ、下縦隔リンパ節切除や、下縦隔での消化管再建が必要となり、術野展開の問題などから、手術の難易度は通常の胃切除に比べるとやや高いと言われています。当センターでは、患者さんの負担を軽減するために、腹腔鏡下に経裂孔的(腹部から横隔膜裂孔を通して)手術を行うことも行っております。

胃がんについて

近年、胃がんの診断と治療が進歩し、胃がんの治療成績は向上しました。このことは胃がんの罹患率が高いわが国にとっては喜ばしいことですが、新型コロナウイルス感染症の影響で「がん検診」等の受診控えが生じ、主に検診で見つかることの多い「胃がん」の手術症例が大きく減少し、胃がんでは「腹膜播種による手術不能」症例が増加しています。最近の報告では、「胃がんの切除症例」数を見てみると、2019年4-12月と2020年4-12月とを比較すると「約20%の減少」となっています。「ステージ別」に見ると、大腸がんと同様に「軽度(ステージI―II)症例」の数が大きく減少しています。さらに「切除できない症例」(開腹したものの腹膜播種があり、腫瘍切除できなかった症例)が増えていることも分かりました。

当科では、胃がんの進行度だけではなく、患者さんの年齢や生活状況、食生活を考えた、個々の患者さんごとに適したテーラーメイド胃外科治療を心がけています。

手術が必要な胃がんの患者さんには日本胃がん学会の「胃がん治療ガイドライン」に沿った標準的な治療を基盤としながら、当センターでは、患者さんへの負担を最小限にするために、低侵襲手術である腹腔鏡下手術を日本内視鏡外科学会の技術認定医が中心となって積極的に行っております。腹腔鏡下胃切除術の利点は、①傷が小さく、痛みが少ない、②術中の出血が少ない、③腸管などの他臓器へ与える侵襲が少ない、④術後早期に回復し、入院期間が短く、早い社会復帰が可能なことです。また、画質の良い腹腔鏡手術システムを用いることで、拡大視された視野の下、さらに繊細で、正確な手術を行うことができ、より安全かつ確実な手術を行うことができます。当センターでは、概ね40~50例/年の胃がん手術数であり、2019年10月からは完全鏡視下手術にも積極的に取り組んでおり、早期胃がん・進行胃がんのすべてにおいて根治性が損なわれない低侵襲手術を行っています。今後はロボット支援下手術による胃がん手術にも対応出来るような体制を整えていく予定です。

かなり進行した状態で胃がんが見つかる患者さんは、現在でも少なくありません。そのような場合、たとえば胃がん治療ガイドラインでは、ステージ4であれば手術ではなく抗がん剤治療が推奨されています。しかし、上述した通り、大きな胃がんがあれば食べられなくなり、体重・筋力だけではなく、QOLも低下し、十分な抗がん剤さえ行うことができません。当センター外科では、高度に進行した胃がん患者さんに対しても、患者さんの食事摂取・栄養状況・QOLを優先に考え、“食べるためを目的とした手術”や“栄養改善のための胃がん治療”を提供します。

また、近年は、胃がんの化学療法は従来の抗がん剤のみならず、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など、多岐にわたっています。私たちは胃がんの化学療法についても、ガイドラインを遵守しながら、最新の臨床試験結果も考慮し、「あきらめない胃がん治療」を常に考えながら、適切に患者さんに提供しています。

そして、食道がんや胃がん以外の疾患として、胃粘膜下腫瘍があります。その主な疾患はGISTです。GISTとは、Gastrointestinal stromal tumorの略で、消化管間質腫瘍とも言われます。通常、胃や腸などの消化管の内側は粘膜におおわれており、その下に筋肉層があるのですが、その筋肉層にある細胞が異常に増殖し、腫瘍化し大きくなると悪性化します。発生部位は胃が60~70%と最も多く、小腸は20~30%、大腸と食道は約5%と言われています。当センターでは5cm未満の腫瘍であれば、腹腔鏡下に胃部分切除を行います。このうち、胃上部にあり部分切除が困難な患者さんには消化器科医師の協力のもと腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery:LECS)を導入し、良好な治療成績が得られています。

下部消化管外科(担当責任者:木村正道)

大腸がんは、食生活の欧米化によって、罹患数、死亡数ともに増加しており、男女合わせると最も罹患率の高いがんの発生部位となります。当科では、4Kフルハイビジョンの大きな画像を見て、精密な手術を行えるメリットを生かし、低侵襲で身体にやさしい腹腔鏡下手術を積極的に行っています。日本内視鏡外科学会が定める、技術認定試験に合格した医師が、すべての大腸手術に参加し、定型化された手術を行い、手術合併症が少ないことも当科の特徴です。

年間100例を超える大腸がん手術を施行しており、その90%近くが腹腔鏡下手術となっています。尚、手術難度の高い進行直腸がんに対しては、必要に応じて術前化学放射線療法を併用することで、根治と肛門温存の希望に応える手術を目指しています。

大腸がんは、手術の他に抗がん剤治療や放射線治療が必要となる場合もあります。ガイドラインやエビデンスに基づき最新の薬剤を導入して、個々の患者様に応じた最適な治療法を提案しています。ステージ4の切除不能大腸がんであっても、薬剤の進歩により長期の生存が見込めるようになり、外科医師のみならず、他の診療科の医師ともカンファレンスを定期的に開催し、最善の治療を選択します。また、摘出したがんの遺伝子を調べるゲノム外来とも連携して、必要なタイミングで検査を行うようにしています。

大腸がん治療に関して、国はがん登録を開始し、そのデータの公表を始めています。2011年から2013年の大腸がん患者様の5年生存率の公表では、当院は大阪府の中で4番目の良好な成績でありました。これは手術だけでなく、手術の合併症の予防対策、手術後の管理、薬物療法などを適切に行ったためと考えております。今後もさらに患者様の予後を改善するよう努力したいと考えております。

肝胆膵外科(担当責任者:上野昌樹・廣川文鋭)

肝臓、胆道(胆嚢・胆管)、膵臓、そして近接する十二指腸、脾臓にかかわる外科的疾患を診療しています。肝胆膵領域のがんは、胃がんや大腸がんと比べて難治性で手術難易度も高いとされています。しかし、当科には日本肝胆膵外科学会高度技能指導医や内視鏡外科学会技術認定医が在籍しており、切除困難な肝胆膵領域がんに対しても、麻酔科やICUによる充実した管理体制を備え、関係各科と協力のうえ、根治性と安全性を重視した最適な治療を提供しています。

肝臓がんについて

肝臓がんは大きく「原発性」と「転移性」の二つに分類されます。「原発性」とはもともと肝臓にある細胞から発生したもので、「転移性」とは大腸がんや胃がんなど、他臓器のがんが肝臓に転移したものです。さらに「原発性肝臓がん」には、肝細胞から発生する「肝細胞がん」と胆管から発生する「胆管細胞がん」の2種類があり、95%が「肝細胞がん」で「胆管細胞がん」は3−4%です。「肝細胞がん」の原因は、約80%がHCV/HBVなどのウイルス感染で、アルコールによるものが5-10%、近年は非アルコール性脂肪性肝炎によるものが増加しています。また、70%が肝硬変になっています。

肝細胞がんの治療

1) 肝切除術、2)経皮的治療(ラジオ波/アルコール注入など)、3)肝動脈化学塞栓治療、4)化学療法/放射線治療など様々であり、当科では「科学的根拠に基づく肝がん診療ガイドライン」の肝細胞がん治療アルゴリズムに基づき治療方針を決定しております(図1)。



図1.肝細胞がん治療アルゴリズム

転移性肝がんの治療

悪性腫瘍が肝臓に転移した場合の多くは、肝切除の適応となりませんが、大腸(直腸)がんや神経内分泌腫瘍からの肝臓への転移に関しては肝切除が最も有効な治療手段です。当科では、腫瘍個数や大きさに関係なく以下の条件を満たせば、積極的に手術を行っております。1)耐術可能である。2)原発巣が制御されているか可能である。3)肝外転移が無いか制御可能である。4)肝転移巣が完全に切除できる。5)十分な肝機能が保持できる。

肝切除術

切り取る肝臓の大きさは、がんの位置や血管への浸潤程度などがんに関連した因子と肝機能や全身状態など患者さん自身の因子により決定します。当科では、最新の3Dシミレーションソフトを用い、肝臓の中のがんと血管との立体的な位置関係を把握するとともに、切除肝容積の算出も行い、術前より綿密な計画をたてております(図2)。また、術中ICG(indocyanine green)蛍光法を利用して切除ライン(区域)の同定(図3)、微小がんの検出、胆汁漏の有無のチェックなども行い、高い根治性とともに合併症の少ない手術を目指し、血管合併切除など高難度手術から腹腔鏡下手術などの身体に優しい手術(図4)まで症例に応じて行っております。



図2.3D構築画像
 

図3.IOGを用いた切除ラインや腫瘍の同定

図4.腹腔鏡下肝切除
開腹の手術創 腹腔鏡下の手術創
腹腔鏡にて観察 腹腔鏡にて腫瘍にいく脈管テーピング
脈管クランプにより切除ライン確認 肝切離断端

胆道がんについて

胆道(胆管)とは、肝臓でつくられた胆汁の通り道(管)のことです。胆汁は肝臓で作られ、肝臓から一部は胆囊にためられ、それ以外は総胆管というところを通って膵臓を貫き十二指腸に排出されます。その胆汁の通り道にできた「がん」の総称が「胆道がん」です。本邦では、1年に約23000人が胆道がんに罹患しており、世界的にみても頻度が高いです。「胆管がん」は男性に「胆嚢がん」は女性に多く、また原発性硬化性胆管炎(PSC)や膵・胆管合流異常症の方には高率に発生することがわかっています。近年では特定の化学物質の関与も報告されておりますが、それ以外の明らかな要因は特定されておりません。


  [胆道がん]を細かく分けると、
肝臓内の胆管    — 「肝内胆管がん」
肝臓の出口付近   — 「肝門部胆管がん」
胆囊        — 「胆囊がん」
膵臓内の胆管    — 「遠位胆管がん」
十二指腸の出口付近 — 「Vater乳頭部がん」
             ということもあります。

胆道(胆管)がんの治療

病期を正確に診断したうえで治療法を決定します。進行した場合、一般的に予後不良で現在外科的切除以外に根治を期待できる治療法が無いため、可能なかぎり手術を行います。また手術後の顕微鏡検査により、最終的にがんの進行度が決定され、抗がん剤や放射線治療を追加します。手術方法は、がん周囲のリンパ節を含んだ結合組織をまとめて切除するのと、肝臓近くに発生した場合は、胆管を含めた広範囲な肝切除+肝外胆管切除や血管合併切除を行います。逆に腫瘍が膵臓近くに発生した場合は、膵頭十二指腸切除や血管合併切除を行います。更に広範囲に進行している場合は、肝切除と膵頭十二指腸切除を同時に行う肝膵同時切除を行う場合もあります(図5)。


図5.肝膵同時切除(肝左葉と膵頭十二指腸切除後)

膵がんについて

膵臓は上腹部の深い部位に位置する15cmほどの細長い臓器で、消化に関する膵液の分泌やインスリンなどのホルモンを分泌しています。早期の膵臓がんは特徴的な初発症状がなく早期発見が困難であります。また進行した膵臓がんでは、発生した部位により症状は異なり、腹痛・腰背部痛・体重減少・糖尿病の悪化・黄疸などを契機に発見されることが多いです。しかし、診断がついた段階で手術ができる患者さんは約20%にすぎず、がんの中でも治りにくいがん(難治がん)の代表であり、我が国のがんによる死亡原因の第4位です。



  [膵臓がん]を細かく分けると、
膵臓の十二指腸側 — 「膵頭部がん」
膵臓の真ん中付近 — 「膵体部がん」
膵臓の脾臓側   — 「膵尾部がん」
            ということもあります。

膵臓がんの治療

病期を正確に診断したうえで治療法を決定します。膵臓がんの基本的な治療は、外科的切除以上に効果のある治療法が無いため、可能なかぎり手術を行います。しかし、膵臓がんは小さいうちから周囲に転移を始めており、手術だけで完全に治すことが難しいため、多くの場合は手術前に抗がん剤治療を行っております。さらに手術後の顕微鏡検査により、最終的にがんの進行度が決定され、抗がん剤や放射線治療を追加します。手術方法は、がん周囲のリンパ節を含んだ結合組織をまとめて切除するのと、十二指腸近くに発生した場合は膵頭十二指腸切除、脾臓近くに発生した場合は膵体尾部・脾臓切除を行います。また、当科では症例に応じて腹腔鏡下手術を積極的に導入しております。

膵頭十二指腸切除術(図6)

膵頭部(膵臓の右側部分)は十二指腸、胆管とつながっているため、この領域(下部胆管、膵頭部、十二指腸)に発生した腫瘍の切除を行う術式を膵頭十二指腸切除といいます。胃の出口、十二指腸、胆管、胆嚢、膵頭部の切除を行い、図のように4カ所の吻合を行います。消化器外科の分野では最も難しい手術の一つとされていますが、当科では症例に応じて腹腔鏡下(補助下)手術も行っております。



図6.膵頭十二指腸切除

腹腔鏡下(補助下)手術
術野の展開 膵頭十二指腸切除後
肝管空腸吻合(再建) 小切開創(手術終了時)

診療実績

手術実績(臓器別)

臓器\年度 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年
食道がん手術 10 7 2 0 0 0
胃がん手術 42 42 45 60 61 63
大腸がん手術 83 86 100 113 90 128
[結腸がん手術] 52 56 70 74 63 93
[直腸がん手術] 31 30 28 38 27 34
肝がん手術 12 21 15 15 14 18
[原発性] 7 12 6 7 9 9
[転移性] 5 9 9 8 5 9
胆石症手術 79 94 91 92 81 98
胆道がん手術 11 6 13 11 10 4
膵臓がん手術 9 7 9 1 10 9
ヘルニア手術 108 95 111 100 95 108
虫垂炎手術 13 18 28 33 24 25
腹腔鏡下手術 329 300 329 329 258 287
[食道切除術] 10 7 2 0 0 0
[胃切除術] 38 38 30 24 25 24
[大腸切除術] 86 76 80 102 96 129
[胆嚢摘出術] 74 87 83 80 74 81
[ヘルニア手術] 87 65 83 75 55 42
[その他] 22 21 53 16 11 53